เข้าสู่ระบบ司が黙って頷いた瞬間、会議室の空気がさらに重くなる。話を聞いていた沙月は息苦しと供に、胸の奥にひとつの疑念が浮かび上がる。「……ねえ、司。どうしてあなたは、デスクが亡くなったことを知っているの?」尋ねる声が震えていた。総務課が報道部に知らせたのは、ほんの数分前。部外者であるはずの司が、なぜそれを先に知っていたのか。だが司は答えない。その沈黙が、沙月の不安をさらに煽る。「総務課の人が言ってたわ……デスクは後頭部を強打して亡くなっていたって……」沙月は唇を噛み、司を見つめた。「ま、まさかとは思うけど……司、あなたが……? 井上デスクを……?」その瞬間、司の表情が険しくなる。「馬鹿なことを言うな! 俺を疑っているのか!」怒りとショックが混じった声が、狭い会議室に響く。だが沙月も引けなかった。「だ、だって……昨日デスクを会議室に連れて行ったでしょう? 二人で戻ってきた時、デスク……物凄く青ざめてた……」司は深く息を吐き、低く言い返す。「……あれは、二度と沙月に手を出すなと警告しただけだ」「え……?」沙月は一瞬、言葉を失った。「そ、そうだったの……? あ……ありがとう……」だが、疑問はまだ消えない。「でも……だったら、どうして司がデスクの死を知ってるのよ?」司はしばらく黙り、やがて口を開いた。「忘れたのか? 天野グループはこの局の大株主だ。重大な事態が起きれば、真っ先に情報が入る」「そ、そうだったの……。それで……デスクが亡くなったことを知ったのね」人の死が関わっているのに、不謹慎だとは思った。だが、司が関わっていないと分かった瞬間、沙月は心底ホッとした。「それじゃ……何故ここへ来たの?」問いかけると、司はわずかに眉を寄せた。「さっきも言っただろう。お前のことが心配だったからだと」「つ、司……」その言葉に、沙月の心臓が跳ねる。だが……その直後、司は恐ろしい事実を口にした。「……あの男が、お前を性接待の餌食にしようとしていた相手。黒川だが……裏社会と繋がっていると言われている。その界隈では有名な話だ」「……え?」沙月は耳を疑い、司は続けた。「黒川は今まで、自分の権力を使って様々な企業から【特別な接待】を受けてきた。そして……その半数は性接待だと言われている」「……そんな……」沙月の呼吸が荒くなる。
楽屋に鍵を掛けた澪は、スマホを握りしめたままガタガタと震えていた。恐る恐る画面をタップし、送られてきた写真を開く。そこに映っていたのは、床に倒れた男性の身体。首から下だけが写されており、左腕は胸の上に置かれている。その手首には、澪がよく知る特注の腕時計が巻かれていた。そして……胸の上に、白い百合が一輪。(この腕時計……デスクが特注品だと自慢していた物……それに白い百合……これは、粛清の証……!)「ど、どうして……井上デスクが……? こんな写真、送られてくるなんて……つ、次は私の番……?」そのとき。ドンドンッ!扉が強く叩かれた。「ヒッ!!」声にならない悲鳴が漏れ、澪の両肩が大きく跳ねる。『朝霧さん! いらっしゃいますか!? リハーサルが始まるのですけど!』廊下から新人ADの声が響いた。澪は怒りと恐怖が入り混じったまま扉を開けた。「何なのよ! あんな強くノックすることないでしょ!」新人ADの青年は澪の剣幕に怯え、青ざめながら深々と頭を下げる。「す、すみません! 慌てていたのでつい……大変申し訳ございませんでした!」心臓は驚きで早鐘を打ちながらも、震える指でスマホの画面を伏せた。(見られてはいけない……絶対、誰にも……!)「……もういいわ。行くから。先に戻ってて」「は、はいっ!」青年は慌てて廊下を駆けていった。扉が閉まった瞬間、澪は膝から力が抜けそうになり、壁に手をついて呼吸を整える。(落ち着いて……落ち着かなきゃ……。でも……なんで私に……? 誰が……?)澪は真っ暗なスマホの画面を見つめる。しかし、胸の上に置かれた白い百合の残像は瞼の裏に焼き付いて離れない。「駄目よ……しっかりしないと……今からリハーサルなんだから。そう、私は朝霧澪。この局の看板女子アナなのよ」鏡に映る自分に言い聞かせ、バッグにスマホをしまうと、澪はリハーサルスタジオへ向かった――**** スタジオ入りした澪は、表情を整えて立ち位置に立った。これから出演するのは、局の朝の情報番組。挨拶をして本日のテーマを読み上げ、軽いトークを交わす――いつもなら何でもない仕事のはずだった。だが、この日の澪は違った。カメラが回ると、言葉がふっと途切れる。スタッフに呼びかけられても、反応が僅かに遅れる。視線は宙を漂い、焦点が合わない。どこか上の空
「遺体で発見って……」「デスク……病気だったの……?」ざわつく報道部の中で、総務課の男性は苦しげに首を振った。「い、いえ……こちらも、あまり詳しくは聞いていないのですが……どうやら井上デスクは、後頭部を強打して亡くなっていたそうで……。遺書のようなものが残されていた、と……。すみません、それ以上は……」深々と頭を下げる男性。その話を聞いた瞬間、空気がさらに凍り付く。「え!? それって……もしかして自殺ってこと?」「でも後頭部を強打って……普通じゃないよね」「自殺じゃそんな亡くなり方、ありえなくないか……?」「ひょっとして殺人……?」「だったら取材に行かないと!」誰かが声を上げ、憶測が憶測を呼び、騒ぎはさらに広がっていく。「もし殺人なら……誰かに恨まれて……?」「そ、そんな……!」次々と飛び交う言葉に、沙月は全身から血の気が引いていくような感覚を覚えた。(そんな……殺人……? デスクが……!?)昨日の光景が脳裏に蘇る。司に呼び出され、青ざめていた井上デスク。そして、霧島がデスクとすれ違いざまに囁いた謎の行動。(まさか……そんな……)呼吸が荒くなり、足元がふらついた。もはや報道部は仕事どころではなく、混乱の渦に飲み込まれている。耐えきれなくなった沙月は、外の空気を吸おうと席を立ち、報道部を出た――その瞬間。ドンッ!「きゃっ……す、すみません……!」「沙月!?」聞き覚えのある声に顔を上げる。そこには、髪を乱し、肩で息をする司が立っていた。額には薄っすら汗が滲んでいる。「え……司……!?」「沙月……ちょっとこっちへ来い!」言うが早いか、司は沙月の腕を掴んだ。その手は強く、震えているようにも感じられる。「ちょ、ちょっと! どこ行くのよ!」沙月の問いに返事もせず、司はまっすぐどこかへ向かって歩いていく。通路にも局員たちが溢れかえり、井上デスクの件で物凄い騒ぎになっていた。(局内が大騒ぎになってるわ……)腕を引かれながら沙月は周囲を見渡して歩いていると、司は不意に足を止めた。そこは会議室で『空き室』となっている。「……ここがいいな」司は小さく呟くと、扉の前でスライド式のサインプレートを乱暴に『使用中』へと滑らせ、そのまま中へ押し込むように入った。「ちょっと! 勝手に何を……!」「誰にも聞かれたくない
――翌朝 眩しい朝日がカーテンの隙間から差し込み、沙月の頬を照らした。「……う~ん……眩しい……」ごろりと寝返りをうち、まぶたを開けた瞬間、時計の針が午前七時を少し手前で指しているのが目に入る。「大変……寝過ごしたわ!」一気に沙月の目は覚め、跳ね起きるようにベッドを飛び出すとリビングへ向かった。テーブルの上では、沙月のスマホが小さく点滅していた。「……着信?」でも今は確認している時間など、無かった。急いで身支度を整え、朝食をとる余裕もなくバッグを掴むと沙月は玄関を出た。――ガチャ!部屋を出た瞬間、ふと隣室のドアに視線が吸い寄せられた。(霧島さん……もう出社したのかしら)数秒だけ足が止まる。しかし、腕時計を見た途端、現実に引き戻された。「いけない、遅刻しちゃう!」ヒールの音を響かせながら、沙月はエレベーターホールへ駆けていった――****規則正しく揺れる車内。つり革の手すりに摑まる沙月の姿があった。(ふぅ……良かったわ、間に合って)ようやく落ち着いたところで、ショルダーバッグからスマホを取り出し、点滅していた着信を確認する。画面に表示された名前を見た瞬間、思わず声が漏れた。「……え?」驚きで声がもれ、沙月は慌てて車内を見渡した。しかし誰もこちらを気にしていないことを確認し、ほっと息をつく。(司から着信なんて……しかも夜中じゃない。一体何の用だったの? メールでも入れてくれれば分かるのに)返信しようとメッセージ画面を開きかけて――やめた。(電車で電話がかかってきても困るだけだし……)スマホの画面を閉じ、沙月は窓の外へ視線を向けた――****――八時半。いつもとほぼ同じ時間。沙月は報道部に出社した。「おはようございます……」遠慮がちに挨拶し、自分の席に座る。ふと視線を向けたデスクの席は、昨日と同じく空のままだった。(まだ出社しないのかしら……? 昨日は今の時間には出社していたのに。データ改ざんの件だって確認したかったのに……)沙月はため息をつくと、PCの電源を入れて仕事を始めた。****――十時過ぎデスク不在のまま、報道部ではいつもの業務を行っていた。沙月は、広報への確認電話を淡々とこなしている。「……はい、承知しました。では十一時にお願いいたします」受話器を置いた瞬間、背後で局員同
車内のカーラジオからは昔の映画音楽が流れていた。すると霧島が明るい声で話しかけてきた。「この映画音楽、懐かしいですね。沙月さんは最近、映画は観ましたか? 僕は先週、話題のサスペンスを観に行ったんですよ。あれがなかなか良くてね……手に汗握る展開にハラハラしましたよ」「そうなのですか? 霧島さんは映画がお好きなのですか?」「はい。でも映画だけではありませんよ。読書も好きです。今読んでいるのは……」映画の話、読書に音楽の話。学生時代の思い出……。普段は落ち着いた口調の霧島が、まるで別人のように楽しげに語る。話し上手な彼の言葉は不思議と耳に心地よく、気づけば沙月は霧島との会話を楽しんでいた。(……霧島さんって、こんなに話す人だったの……?)そんな小さな違和感を胸の奥に抱えたまま、車はマンション前に到着した。「着きました。どうぞ、沙月さん」「はい……ありがとうございました」シートベルトを外しながら礼を述べた。「いいえ、お礼なんていいですよ。僕は駐車場に車を止めてきますので、沙月さんはそのままお帰りください」「分かりました。今夜は送っていただき、本当にありがとうございました」沙月が頭を下げると、霧島笑顔で言った。「それでは、おやすみなさい」車を降りて扉を閉めると、そのまま車は静かに走り去っていく。沙月は振り返ることなく、エントランスへ向かった。****疲れがたまっていた沙月は、部屋に戻るとすぐにバスルームに移動して浴槽に湯を張った。その間に着替えや、バスタオルの用意をして再びバスルームへ行くとちょうど良い具合まで湯がたまっている。そこで早速沙月はシャワーを浴び、髪と身体を丁寧に洗う。お気に入りの入浴剤を入れた浴槽に身を沈めると、疲れも落ちていくようだった。「フフ……やっぱりお風呂に入れるマンションを借りて正解だったわ……」沙月は笑みを浮かべた――****「ふ~気持ちよかった……」 風呂から上がり、部屋着に着替えて髪を乾かした沙月がバスルームから出てきた。そのままキッチンへ向かい、冷蔵庫を開けると以前買っておいた白ワインのボトルが入っている。「……少しだけなら、いいよね」沙月は小さく呟き、ワイングラスを取り出した――間接照明だけを灯したリビングは、オレンジ色の淡い光に包まれている。沙月はローソファに座って、白ワ
――18時。定時を告げるチャイムが鳴り、沙月の退社時間になった。結局、デスクは午後から一度も席に戻らなかった。報道部の空気はどこか落ち着かず、局員たちも「どうしたんだろう」と顔を見合わせている。渡された仕事はすでに終わっている。だが、肝心の本人がいないのでは手渡しもできない。仕方なく、沙月は完成したデータをデスク宛てにメールで送信し、帰り支度を始めた。――そのとき、受信フォルダに見慣れた名前が光った。「……司?」開いてみると、短いメッセージが一つ。『今日は用事が出来て、送ることが出来ない。悪いが一人で帰ってくれ』「何よ。子供じゃあるまいし、一人で帰れるわよ……」口ではそう呟きながら、胸の奥がわずかに沈む。本当は、ほんの少しだけ残念だった。(……一緒に帰れれば、デスクと何を話したのか聞けたのに……)そう思った瞬間、ハッとして頬が熱くなる。(ち、違う! これじゃまるで、司と一緒に帰りたいみたいじゃない! 冗談じゃないわ!)自分に言い聞かせるように頭を振る。沙月は手早く荷物をまとめると小声で「お疲れさまでした」と小さく挨拶して報道部を後にした。**** エレベーターホールに向かおうとしたそのとき、局の入口から見覚えのある人物が戻ってきた。「天野さん、またお会いしましたね」「霧島さん……? また局に何か用でも?」「いえ、忘れ物をしてしまって。取りに戻ったんです。そうだ、良ければ一緒に帰りませんか? 部屋も隣同士ですし、今日は車で来ているんですよ」「えっ……でも、また何か噂されたら……」「大丈夫ですよ。僕たちが隣同士だってことは、もう皆に話しましたし。車もすぐ脇のパーキングです。そこで待っていてくれれば、誰にも気づかれません」霧島は穏やかに微笑む。沙月は少しだけ迷った。(……そうね。霧島さんにも、デスクのことを聞きたいし)「では……ご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」「もちろんです。では、駐車場で待っていてください。すぐに行きますから」霧島は軽く会釈して局内へ戻っていった。沙月は外へ出て、夜風の中をパーキングへ向かう。「駐車場……ここなのかな?」駐車場の入り口で佇んでいると、小走りの足音が近づいてきた。「お待たせしました、天野さん!」「いえ、そんなに待ってませんよ」「良かった。僕の車はあちらの白







